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世界各地で台頭するイスラムフォビアへの打開策とは?

Sunday, December 4, 2016

パンオリエントニュース

(東京) - イスラム世界における民主主義の可能性を探る国際フォーラムが、24日、笹川平和財団主催で都内にて行われた。

先の米国・大統領選でも話題になったように、イスラム国に代表される過激派集団の存在の影響から「イスラムフォビア(イスラム教徒に対する偏見・恐怖・憎悪)」が世界各地で台頭していることに懸念の声があげられている。これを受けて、フォーラムでは『イスラムフォビアの現状分析』と題するセッションが設けられ、有識者達が意見を交わした。モデレーターはトルコ政治経済社会研究財団のワシントン代表であるキリチ・ブグラ・カナット氏が務めた。

パネリストとして登壇したトルコ・ドイツ大学准教授のエネス・バイラクル氏は、「ヨーロッパではイスラムフォビアの存在を否定しているが、実はトルコやアルジェリアといったムスリムが人口の大半を占める国でもイスラムフォビアは存在している」と指摘。また、「イスラムフォビアはすべての国で認識されるべきだ。ヨーロッパでイスラムフォビアの姿勢を見せる政治政党が支持率を高めていることからも、特に同地域では認識される必要がある。そしてすべての人々が教育や労働に関して差別なく扱われるべきだ」として、イスラムフォビアの現状に警鐘を鳴らした。

一方で、「イスラムフォビアは選挙のキャンペーン戦略になった」と述べたのは国立台湾大学のブリジット・ウェルシュ氏。「イスラム国のメンバーとムスリム(イスラム教徒)を区別できていない人々による宗教的ヘイトクライムが増加している。イスラムフォビアはヨーロッパだけではなくグローバルな現象だ」と訴えた。また、過激派組織がムスリムの印象を「コントロール」するようになってしまったとして、イスラムフォビアを是正するためには各国が「国民のための教育」としてメディア戦略を展開すべきだとした。

アラブ・イスラーム学院の顧問である水谷周氏は、日本に関してはこれまで社会現象としてイスラムフォビアが台頭してこなかった理由として①日本国内でイスラム過激派による大きなテロ事件が起きていないこと、②日本独特の宗教に対する寛容性、穏健的な国民性がイスラムに対して激しく反発するようなことに相容れないこと、の二点を挙げた。しかし、日本にいる特に外国人ムスリムが日本で生活していく上で適用しやすいように注意を払うことへの重要性を強調した。

タイのムヒドル大学准教授のイムティヤズ・ユースフ氏は、「アジアにおけるイスラムフォビアはメディアや本を通じてやってきた越境的な現象である」と述べ、ムスリムと仏教徒間の対立の危機に警戒感を示した。これを回避するために、世界的な相互理解と連携を深めて、東南アジアにおけるムスリムと仏教徒の平和的共存を目指していきたいとした。

ここ数年、日本で報道されるアラブ情勢といえば過激派によるテロ事件やシリア紛争など悲惨な暴力に関するものが多数を占めているが、民主主義の理念をイスラム世界に取り入れ、非イスラムとイスラム圏の共存を模索する運動も、現地では根強く続いている。笹川平和財団が主催した第3回「ムスリム・デモクラット世界フォーラム」は、メディアではあまり触れられないイスラム圏の様々な問題に焦点をあて、議論を通じ解決方法を模索することを目的として開催された。

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