文化

イスラムとの対話 平和への願いを込めて

Wednesday, May 6, 2015

パンオリエントニュース

東京 - サウジアラビアのマッカに本部を置く世界イスラーム連盟(MWL)と世界宗教者平和会議日本委員会(WCRP Japan)の共催、日本ムスリム協会の協力で「ムスリムと日本の宗教者との対話プログラム」が、4月9日・10日、都内にて開催された。昨今、各地でイスラームの名を悪用する過激派組織の暴力や武力行使が頻発し、世界の平和と安全を脅かしている。この事態はイスラームに対する誤解と偏見を助長することから、WCRP日本委員会はイスラームとの対話を重視し、イスラームと日本の諸宗教が共有する平和に対するヴィジョンを模索しつつ、異質なものとの共存と文明や宗教の多様性の価値を再確認し、平和、正義、共に支え合う安全保障の実現に向け、諸宗教間の協働の促進を話し合うための会議を開催することにした。

開会式において、まず始めに日本ムスリム協会会長・徳増公明が1962年マッカで設立された世界ムスリム連盟について紹介し、「同団体はイスラームの布教活動のみならず、世界平和実現と人類の幸せのために人道支援、慈善活動などをしている。また同連盟はこの2月に、世界中のイスラーム指導者と学者500名をマッカに招き『イスラームとテロリズムとの戦い』と題する国際会議を開催し、テロ撲滅のために議論し、声明を発表している。そのような団体と日本の宗教団体が共催で対話会議をすることは喜ばしいことである。」と述べた。

続いて、岩井文男 中東アフリカ局審議官が、岸田外務大臣の挨拶を代読し「1月の邦人殺害、先日のチュニジアの事件など一部のテロがイスラームを傷つけているのは大変残念で、この会議を通じてイスラームの広い理解が広まることを願う。テロ対応策を強化する。テロの要因ともなっている貧困救済を支援する。テロのない社会を実現したい。」と述べた。

WCRP日本委員会会長、庭野日鑛立正佼成会会長は、「サウジアラビア・アブドッラー前国王は、対話は平和を進めるための第一歩であるとマドリード会議で提案された。1970年来我々は悠久の理想と平和に背いてきたことに懺悔する。平和を破るのは宗教ではなく宗教者であり、人間の怒りと憎しみが戦争を起こすのである。相手を傷つけないことは仏教の教える第一の戒律である。」と述べた。

MWLのアブドッラー・ビン・アブドルムハセン・アル-トルキー事務総長は、「人間は、違いがあることを現実として認めつつ前向きな共生の方法をさぐる必要がある。方法は様々であるが、人は、平等に作られており、 人種・色・性などで差別はない。人は天賦の才能があり、選択の自由がある。世界の争いは、宗教が原因ではなく、寛容さが大切である。テロは宗教を代弁しているのではなく、国際社会が弱者を助けることを怠っていることが原因である。イスラーム法を乗っ取って、イスラームとテロを結び付けてはならない。相互理 解と共生の為、対話が一番である。グローバリズムは、道徳や世界的平和を壊している。悪化する世界の紛争を軽減し平和と相互理解を気づくためには、諸宗教との対話が必要である」と強調した。

会議は、「宗教と平和」「宗教の違いと憎しみ」「宗教の価値と共通の課題」「今後の計画」をテーマに、日本からは仏教(立正佼成会・天台宗・浄土宗)・神道(明治神宮・黒住教・秩父神社)・キリスト教・イスラーム研究の代表者、海外からはサウジアラビア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、インド、台湾、韓国からの代表者がプレゼンテイターとして出席した。

会議の最後には共同声明が発表された。サウジアラビア主導の空爆が行われているイエメン情勢に関しては、

・本大会は、IS(ダーイシュ)、アルカイダ、イエメンのフーシなどの過激派諸組織が犯している暴力や殺戮がイスラームの教えに反するものとして、これを非難する。イスラームは、慈悲と平和を呼びかけ、人間の尊厳を擁護するものである。

・テロリズムとの戦いは、イスラームを名目として戦うことやイスラームを嫌い広めるものであってはならない。先ずイスラ-ム諸国・学者・有識者および諸組織との協力を得て行われるべきものである。またテロリズムと戦う最善の道は、テロリズムの諸原因を除去することである。その為に諸原因を偏見をもたず公正に取り込まなければならない。世界の殺害行為を進める諸政策について、座視してはならない。また罪なき弱き人々に対する不公正を排除する行為に遅延はゆるされない。

・ 本大会は、今年2月にリヤドで世界イスラーム連盟が開催した「イスラームとテロリズムとの戦い」会議の最終声明文を支持する。またサウジならびに湾岸諸国と同盟国がイエメンのフーシテロに対してとった一連の措置について、これを認識する。

などが宣言された。また、今後の活動に関しては、「我々は、過去の歴史的経験から学び、世界平和の推進に役立てていかなければならず、貧困・疾病・から脱し、難民や避難民を救済するよう国連諸団体・慈善団体とともに人道支援を継続することを確認する。世界イスラーム連盟と世界宗教者平和会議日本委員会は、真の聖なるメッセージとは人類の文化・文明に深く注意をはらい、社会の安定を促進し、急進主義やテロリズムから社会を守るものであるとする」と平和への願いを強調し、そのために尽力していく意を伝えた。(報告:塚本和子)


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