文化

新星スーダン人女性シンガー 南北スーダンの架け橋を目指して

Friday, March 6, 2015

パンオリエントニュース

ドバイ - 最近高い注目を集めているスーダン人女性歌手のシャデン・モハメッド・フセインさん。彼女は「自分の歌を通じてスーダンが多彩で美しい文化や芸術を持っている国であることを世界に広めたい」と話す。

シャデンさんは現在33歳。パンオリエントニュースの駐ドバイ記者に対して、「音楽とはローカル発祥の文化や芸術を、国境や言語の違いの壁を乗り越えて世界中に広める力を持っている」とシャデンさん。スーダンと聞くと、長年の紛争のイメージから国民の貧困や死、疾病の蔓延や機会の不平等性などネガティブなイメージを国外では持たれることが多い一方、「自分の歌を通じて、スーダンの、特に文化的に豊かな背景を持つ西スーダン、コルドファン、ヌバ山地や南スーダンの文化を世界に広めて行きたい」という。

歌手歴こそ短いシャデンさんだが、スーダンの人々から既に広く支持されている。最近では母国語のアラビア語やスーダンの方言に加え、英語やフランス語の歌も発表している。世界への発進力を高めるためだ。

シャデンさんの声は広い音域を持ち、また非常に情緒豊かな表現で歌詞を綴る。正統派で実力派の彼女の今後に、業界も高い期待を見せている。

『Antona al-Kheir Antona al-Salam(=私達に幸せを、私達に平和を)』は、シャデンさんの代表曲の一つ。「スーダンは発展途上国であり、完全な平和は訪れていません。それは全世界が知っていることでしょうが、私達の前にはまだたくさんの問題が山積みであり、争いも国のあちらこちらで起こっています。だから私は、あらゆる言語を通じて平和への願いというメッセージを伝えていきたいんです。」

また、彼女は遊牧民族の姿から多くの曲のインスピレーションを得てきたという。例えば、らくだのゆったりとした、且つしなやかな動き方などだ。スーダンは、歴史的には多様な文化が出会った場所でもある。ベドウィンと呼ばれるアラブの遊牧民の部族達が、水や放牧地を求めて辿り着き、異なる言語や文化を持つ部族が出会ったのだ。例えば、シュルク(南スーダンの牛飼いを生業としていた部族)と呼ばれるベドウィンの部族は、他のベドウィン部族と同様牛の動きなどから音楽の発想を得ているとされているのだが、異なるリズムの音楽を奏でる。「結婚式では、異なるリズムをもついろいろな音楽が演奏されるのよ」と、シャデンさんは地域の音楽のすばらしい多様性を誇らしくアピールした。

彼女が発表した10曲のうち、『愛しいスーダンの人々よ、いま手を取り合って私たちの谷を造り上げましょう』という曲がある。これは現在南スーダンの首都であるジュダの方言で歌われている。「この歌は寛容性と平和を呼びかける歌なの。けれど、同時に紛争や分断されてしまった経験を悲しみも歌っている。私はこの歌を人々を元気づけるためでなく、南スーダンにいる私達の『兄弟』達へのメッセージを含めたの。私達は一つの国に一緒に生きていたけれど、政治が私達を二つに分断し、今では簡単に連絡を取り合うことも難しい。そして、寛容性を持ちお互いの宗教を尊敬しあうことが、自分たちの価値観そのものを尊敬することであると伝えたい」とシャデンさん。

彼女の今後にぜひ期待したい。

(聞き手:エルファテ・メルガーニ)


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