外交

アラブウィーク2015 アラブ世界における日本のNGOの可能性とは

Wednesday, April 8, 2015

パンオリエントニュース

東京 - アラブウィーク2015の一環として、『アラブ世界を取り巻く諸問題と日本のNGOの役割』と題したセミナーが、8日、都内のJICA地球ひろばにて開催された。

本セミナーは、激変する中東情勢において、日本のNGOがどのような役割を担っていくことが出来るのかを議論することを目的として開催された。

在京アラブ外交団を代表し基調講演を行ったハリール・ハッサン駐日バーレーン大使は、紛争が頻発するアラブ諸国における教育の重要性を強調した。「アラブ諸国では人口の約半分が15歳以下という国も多くある。この少年少女が将来にどのような希望を持てるかが鍵。紛争は人々の思考に大きな影響を及ぼす。そのために教育が重要で、教育に必要な環境整備、平和構築を推進していかねばならない」と述べた。

日本国際民会協力会(NICCO)事務局を代表として参加した折居徳正氏は、日本人の偏った中東地域へのイメージについて言及し、「2011年からの中東地域における政変に始まり、今年初頭に起きた日本人人質事件も含め非常に危ない地域という印象をもたれている側面が伺える。しかし、安全な地域は安全であり、草の根レベルの支援を継続していくことが重要」とした。NICCOは、中東地域ではヨルダンを拠点にパレスチナなどで活動。紛争経験者に対するメンタル支援等を行っている。

NGOパレスチナ子どものキャンペーンはパレスチナ難民キャンプにて教育支援や歯科活動を行っている。同団体の田中好子氏は、昨年イスラエルとの紛争を再度経験したガザ地域は今だに孤立し復興が進んでいないとして、更なる支援を呼びかけた。

JICAからは国兄事業部市民参加推進課長の田和美代子氏がパネリストとして参加、モデレーターはジャパン・プラットフォーム共同理事代表の木山啓子氏が務めた。外務省からは中東アフリカ局審議官の岩井文男氏が特ゲスト・スピーチを行った。

質疑応答にてヤヒヤ・ンガム駐日モーリタニア大使は、課題としてアフリカにあるアラブ諸国には日本のNGOや援助活動の情報がなかなか入手しにくいと指摘。それに対し、パネリストの一人である外務省国際協力局民間連携室長の江原功雄氏は、「日本のNGO支援がパレスチナやシリア、イラクといった国々に集中しているのは事実。マグレブ諸国においての活動は少ないし、(協力の)要請も少ない。今日のセミナーをきっかけに、在京大使館からも日本のNGOに声をかけていってほしい」とした。

在京アラブ外交団長を務めるワリード・シアム駐日パレスチナ大使は、「日本のNGO団体がアラブ諸国の政治事情に対して通常中立的立場にあることは大きい。活動を行う上で課題はあるが、それに対処する最善の方法の一つは在京アラブ諸国大使館と密に交流し、互いへの理解を深めることだ」として、連携強化を呼びかけた。

平成26年度の日本政府によるNGOを通じた中東支援規模は5.2億円で、主に医療、教育、農業等社会経済開発及び難民支援を行っている。ジャパンプラットフォームを通じた人道支援(政府資金)は62億円で、シリア難民やイラク国内避難民、ガザ支援などに充てられた。

アラブウィークとは、日本とアラブ諸国の交流を深めることを目的として、在京アラブ大使館主催で年一度開催される。今月6日には開幕レセプションが都内にて開かれ、安倍首相も出席した。(東京 - 柴田真也子)

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