政治
イラン国民の本当の声 専門家陣が「真実」の報道を呼びかけ
Tuesday, October 23, 2012
東京 - パンオリエントニュース
訪日中のイラン外務省付属政治国際問題研究所(IPIS)と中東戦略研究所所属の専門家陣が、22日、都内の日本財団ビルで、日本報道関係者との懇談会を行った。
今回の懇談会は、笹川平和財団中東イスラム基金が日本とイランのさらなる相互理解を享受し、欧米メディアの情報を介してではなく、イラン人の声を直接的に日本メディアに伝えることを目的に行われた。
懇談会では、イランの核開発問題や混迷するシリア情勢に関して質問が集中。IPISの所長ムスタファ・ドラティヤール博士が中心となって記者団の質問に答えた。
“核問題を巡り欧米諸国からの経済制裁が続いているが、打開策はあるのか?”
ドラティヤール博士は、イランと欧米諸国の関係悪化の始まりはイラン・イラク戦争の頃にまで遡ると説明。イラン革命を発端として民衆蜂起が各近隣諸国に飛び火することを恐れた米国を筆頭とする西側諸国が、イラクのサダム・フセインを利用してイラン侵攻を行ったと言及し、当時を振り返って「私たちイラン国民にとって、制裁下で生活しなければならないことは初めてではない」と博士は言った。「イラン・イラク戦争は8年も続き、そのときも経済制裁を受けた。そのような中でも私たちは努力し、生き続けてきた。だから、別に今回の経済制裁が特別という印象は国民にない。慣れているのだ」と続けた。そしてその頃の状況が、原子力製造につながったのだという。
「戦後、イラン国民は復興にとりかかった。そのとき、科学発展を国にもたらすことが最重要目標の一つだった。その『科学発展』には、ITや生命科学の発達、そして核開発が含まれていた」とイランの核開発の経緯を説明。また、テヘランにある原子炉について触れ、「テヘランに原子炉があるのは周知の事実だが、それは米国によって建設されたものである。原子炉は医療用目的にのみ従事し、アイソトープを製造するために使われている。決して軍事利用のために稼働しているわけではない」とし、「この原子炉を稼働させ続けるために原子力が必要だったが、米国はそれを供給しなかった。イランは国際原子力機関(IAEA)に公式文書を提出し、民生用の原子炉であることを説明したが、どの加盟国もウラン濃縮を提供しなかった。だから、自分たちでつくるしかなかった」と続けた。今年9月には、イランの核開発に対してIAEAが非難決議を採択した。対立は益々深まっている。「経済制裁下ではあるが、イラン国民も核開発に対しては政府を指示している。政府も平和利用の目的にのみ原子力を使用することを明確にしており、欧米諸国はイランの国としての当然の権利を認めるべきだ。平和利用の権利さえ認めてくれれば、この問題はすぐに解決する」と述べた。
“アラブの春やシリア情勢は最高指導者ハーメイニー師が述べたように「イスラムの覚醒」であるのか?”
この話題に関し、中東研究所所長のケイハーン・バルゼギャール博士は、「ハーメイニー師が述べた『イスラムの覚醒』という見方はアラブの春を発端とする一連の民衆蜂起を現実的な見地に立って表現した一つの見解である」としながら、「しかし、これらの動きはたった一つの原因から起きたものではない。民衆の独裁政権や保守的政権への怒り、また中流層の低迷する国内経済や労働環境への不満等も大きな理由だ。様々な観点に基づいて注意深く考察する必要がある」とした。
シリア情勢に関しては、「シリア問題解決の際には、シリア国民の人権が一番に考えられなければならない」とした。欧米諸国の対応を明確に批判し、「私たち、そして中東諸国が注視すべきは外国軍が中東情勢に関し繰り返し歴史的に介入してきた点である」と述べ、「シリアでは革命軍がアサド政権を打倒しようとしているが、アサド政権が実際に崩壊した後にはどのような政権が樹立されるのか、という問題に対し欧米では十分な議論がされていないように思える。大事なことはシリアの明日についての議論にも拘らず、だ」と述べた。
中東地域では21世紀に入り、もう二度も戦争が起きている。2001年に始まったアフガニスタン紛争と2003年のイラク戦争だ。どちらも欧米諸国によって開戦されたものである。歴史的背景も相俟って、イランはますます欧米諸国の地域情勢介入に警戒心を強めているようだ。「イランは常に外国軍の介入は地域の不安定につながると反対してきた。我々を含め、地域諸国は外国勢力がどこまで中東情勢に対し関わるべきか議論していかねばならない」として、「イランはシリア情勢解決のために3つの提案をしてきた。停戦、あらゆる分野においての対話、そして平和的安定の構築である。これらが享受されたとき初めて、シリアで民主的な国政選挙が行われ、本物の国民のリーダーが選ばれるだろう。この提案と、イラン自身の国益的観点を踏まえた上で今後もシリア情勢を我々は注視していく」とした。
- 欧米メディアへの批判-
今回の懇談会で専門家陣が一貫して批判したのは、欧米メディアの偏った批判である。欧米各国の国益と政治的要素が影響して、イランを含め他の中東諸国や北アフリカ諸国の民衆蜂起が正当に報道されていないとし、日本の報道陣に対し、「欧米メディアの影響を受けず、私たちの直接的な声を届けてほしい」とドラティヤール博士は強調した。「日本とイランは今まで良好な関係を歴史的に築いてきた。日本の人々にもイランの本当の姿、現状を知ってもらいたい」と願いをこめた。
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