エネルギー
川崎市 最先端の「エコ工業地帯」を海外に宣伝
Saturday, November 6, 2010
戦後日本の高度経済急成長に合わせて発生した川崎公害病問題。そうした環境公害の影響か、川崎市は、全国の最も住みたくない街の上位にランクインするなど、マイナスなイメージが定着しがちだ。しかし、一方、同工業都市が、長年、最先端の「エコ工業地帯」作りに積極的に取り組んでいることは意外と知られていない。地球環境と工業が調和した最先端の「エコ工業地帯」を海外にもアピールしようと、川崎市は、4日、日本外国特派員らを対象に京浜臨海工業地区ツアーを開催した。
川崎エコタウンとして、市は工場から出される排出物などを原料として有効利用している。ツアーでは、川崎エコタウンの先導的モデル施設として設備された「ゼロ・エミッション工業団地」を訪問。団地内の古紙を100%原料にトイレットペーパーを生産する世界初の「ゼロ・エミッション製紙工場」。同工場には、企業などの機密書類ファイルが入ったダンボールケースが同工場に届けられる。工場作業員が、ダンボールごと、特殊な装置に入れ、材料を選り分け、紙の原料として行く。紙とプラスチックなどのゴミを分けるだけでなく、紙に染み込んだインクまでを消す機能が付いた製紙工場の技術は、「世界的に非常に高いレベル」(工場関係者)と評価されている。書類だけでなく、切符、牛乳パック、インスタントラーメンのカップなどがトイレットペーパーの原料に変化する。1日に120~130万トンのトイレットペーパーが製造されている。
ゼロ・エミッション工場として、機械の稼動燃料は近所のJFEスチールの余熱を再生していると言う。来年の春から、川崎市全体の紙ごみを同工場のトイレットペーパー原料にリサイクルする予定だ。同施設は、2003年1月に、170億円の設備投資で建設された。以降、順調な売り上げを伸ばしている。「技術的にとても高いことをやっている。海外からも視察団が来る。ベトナムは既に同じ工場を建設した」と工場関係者は話す。
ツアーは、屋形船で京浜工業地帯の夜景を海から眺め最後を締めくくった。日本の主要な工場などを見学して回る「川崎工場夜景」クルーズは大人気で、予約がなかなか取れないほどだ。
川崎市は、1970年代に問題となった光化学スモッグや大気汚染などによる「川崎公害病」の反省として、39の工場と大気汚染防止協定を結んだ。それ以降、同市は環境対策に対し、“世界で最も厳格な規制”を課し続け、今では、「日本を牽引するエコ工業地」になっているという。 同ツアーのガイドとして参加した川崎市産業政策部長の伊藤和良さんは、「現在、30年前に日本が被った同じ公害問題が中国などで生じている。だからこそ、川崎市発の環境科学技術を中国やベトナムなど新興国に貢献したい」と話した。
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