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日本-アラブ関係の未来 アラブ外交団が世界の平和、安定、そしてさらなる発展を呼びかけ

Thursday, April 10, 2014

パンオリエントニュース

東京 - アラブウィーク2014の一環として『国際社会の試練と日本の未来 - 中東・北アフリカとの外交・経済における戦略的提携について』というシンポジウムが、9日、都内のオマーン大使館で開催された。モデレーターは中東調査会理事長で元・中東和平問題特使の有馬龍夫理事長が務めた。

駐日パレスチナ大使・アラブ外交団代表のワリード・シアム氏は、開会の挨拶で、「アラブ諸国の人々の日本への期待は大きい。しかし両者の関係は未だ発展途上であり、戦略的関係が二カ国間・地域全体のレベルで強化されるべき。それは地域、そしておいては世界の経済の持続的安定に貢献するだろう」と、日本とアラブ諸国相互に利益をもたらすパートナーシップが将来的に構築されるよう共に模索していきたいと訴えた。また、両者間の相互理解を促進する手だてとして、日本の若者に、アラブ諸国を積極的に訪問し、アラブ諸国がいかに美しい場所であるかを自分の目で実際にみてほしいと呼びかけた。

シンポジウムでは、アラブ諸国からは駐日バーレーン大使のハリール・ハッサン氏と駐日エジプト大使のヒシャーム・エルズィメーティ氏がパネリストとして登壇。ハッサン氏は、既存の政治・経済システムと現実社会の乖離が激動する世界情勢問題の根底の一つであり、市民間の不平等さは政治を不安定にし、結果的には政府が機能不全に陥るとして安定さを享受するには平等さを社会に構築する必要があり、「平和と政治的安定は経済競争力を支える基本的要素。これが中東諸国には何よりも必要」と述べた上で、この点において日本から得るものは大きいのではと示唆した。

中東協力センター代表専務理事の弘田精二氏は、ハッサン大使の発言を踏まえ、戦略的関係構築については日本からの投資がアラブ諸国の経済発展を基軸として日本が中東地域発展プロセスに貢献できるとして、日本からの投資を促進していくことが同組織のプライマリーゴールであると述べた。

一方でエルズィメーティ氏は、アラブ諸国も日本と同様に世界の平和、安定、そしてさらなる発展を追求しているが、「これらは中東に平和が訪れない限り享受されることはない。そして中東和平はパレスチナ問題が解決されない限り訪れない。2002年にアラブ連盟において採択された『アラブ和平イニシアティブ』とそれに付随する文書を基にパレスチナ問題が解決されなければ、パレスチナの人々の苦しみは終わらない」として、日本に対し、米国、イスラエル、パレスチナ三ヶ国全てとの緊密な関係を活かし、壁にぶつかっている和平交渉が促進されるよう政治的イニシアティブをとってほしいと訴えた。

日本メディアからはNHKで中東地域を担当とする出川展恒氏が登壇。ジャーナリストの視点から中東・北アフリカ諸国を席巻した民主化運動『アラブの春』について語り、政治不安が続くエジプトに関し、「エジプトの人々は民主化を求めていたが、現在は誰も民主化の話をしない。彼らが今求めているのは安定と安全であり、そのためには強いリーダーが必要なのはわかる」と述べつつも、大統領選勝利が確実視されるシシ元・軍総司令官兼防衛大臣は「当選しても様々な問題に直面するだろう。ムスリム同胞団は反発を続けるだろう。国民和解が成立しなければエジプト経済・社会の安定は訪れない」としてエジプト政府が包括的な国民和解を促進するよう訴えた。

出川氏の発言に対しエルズィメーティ・エジプト大使は、「エジプト国民にとってシシ氏は国家を破綻から、もしくは他の一部の地域諸国のように内戦に陥ってしまう事態から救った英雄だ」と述べた。また、「イラクは長い間軍に支配されていたが、現在の状況は3年前、5年前に比べると幾分よくなってきている」とコメントした。

外務省からは中東局長の上村司氏が参加し、アラブの春の一連の動向について「デモクラシーは全ての問題の解決策ではないし、一つの決まったモデルがあるわけでもない。欧米のデモクラシーとは異なるデモクラシーが中東諸国にも存在する。互いの差異から学ばなければ、良好な関係は構築されていかない」と述べた。

シンポジウム開催に関し駐日サウジアラビア大使のアブドゥラジーズ・トルキスターニ氏は、パンオリエントニュースの取材に対し、「今日のシンポジウムは日本とアラブ諸国の『将来』に焦点を当てていた点が革新的だった。大半のイベントは『現在』に焦点を当てている。アラブウィークの催しを通じて、日本とアラブ諸国の将来的関係を模索・発展する契機となってほしい」と答えた。関係発展のアプローチの一つとして、日本とアラブ諸国間での人的交流を促進し、理解を深めることが重要だとした。(東京 - 柴田真也子)
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